「ラブラブキューピッドになってやるぞの巻」


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     ここに来る度にナルトは少し気後れを感じる。  なんでって、ここにいる忍者たちはみんな頭が良さそうで、キビキビと歩き回っているからだ。  オドオドと辺りを見回しながら歩くナルトは、いかにも邪魔という邪険にした視線で見られる。  そうここは木の葉病院に併設された医療部。医療忍者の面々が日夜研鑚を重ねている研究棟なのだ。  ここに火影、綱手の弟子であるサクラも実験室を持っている。  カカシの話によれば、ここでサクラは何かやっているらしい。 「サクラちゃんのことだから、俺には全くわかんない勉強してすんごい薬でも開発してるのかな? ひ ょっとして、「ナルトの命はわたしが必ず守る!」とか言って。ニシシ」  お気楽に忍び笑いしたナルトだったが、予想はもちろん外れることになる。 「何しに来たの?」  サクラの実験室に足を踏み入れたナルトに送られた第一声がこれだった。  白衣を着て、真剣そのものの顔で眉間に皺を寄せながら粉を測っていたサクラが、ナルトが開けたド アのせいで風が吹き込み、粉が舞うのに怒りが滲んだ視線をくれる。 「何しにって、……サクラちゃんに会いに」 「見ての通り、わたしは忙しいの。あんたと遊んでいる暇はないの」  黒い匙で測り取った粉や薬草を乳鉢でゴリゴリと潰している姿も、少々キレ気味の口調も随分と綱手 にそっくりになっている気がする。 「何作ってるんだってばよ」  このまま追い払われるのも癪だと言葉をかければ、どうせあんたには分からないような高度なものよ という視線が向けられる。 「クリームよ」 「クリーム? ケーキにのってるあれか?」 「違う! だからあんたには関係ないから!」  やけに強い口調にウッと後退りしたナルトは、どうせ俺のことなんてサクラちゃんは好きじゃないん だもんねと文句を垂れながら実験室を後にする。 「全くうるさい奴ね」  乳鉢で薬草をすり潰す作業から顔を上げたサクラが呟く。  だがその視線の先で、テーブルの上に載せられたバナナを見て、思わずため息をともに微苦笑を浮か べる。  ナルトの置き土産だった。
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